2018/04/01

強制着せ替えアプリ

着せ替えアプリ

僕のスマホにいつのまにか、強制的に着せ替えることができるアプリが
インストールされていることに気がついた。
僕はその時に、自分をいじめるあいつに復讐してやろうと心に決めたのだ。

トシヒコはいわゆる外見優等生だ。
見た目もイケメンだし、勉強も運動もできる。そして資産家の一人息子。
残念なのが性格だ。クラスで派閥を作り弱そうなやつを攻撃する。
そんなターゲットにされるのは、いかにも弱そうな僕のような人間で、
教師に訴えようにも表向きに素行は良いため、大人は信用しないのだ。



「さて…じゃあターゲットをトシヒコにセットして…と」
スマホでパシャリと撮影し、アプリに登録する。
解析中…としばらく表示された後に、リストが表示される。

E 夏カッターシャツ
E シャツ
E 学生ズボン
E トランクス
E 靴下
E シューズ

「当たり障りのない服装だなー。」
さてここからだ。
僕は所有アイテムリストを呼び出し、数日前に手に入れたものを探す。

桜楓のスクール水着

あったあった。
学年で1番かわいい楓ちゃんのスクール水着である。
スマホに3D表示された紺色の水着には、「桜楓」と記されたゼッケンもはっきりと確認できる。
手に入れるのは簡単だった(アプリで写真を撮るだけで取り込み完了)のだが
放課後に、盗難騒ぎに発展し大事になってしまった。
その時に楓ちゃんの前でいい格好をして積極的に犯人捜しをしていたのはトシヒコ。
(そんな本人が着ていたら…どうなるかなあ)
アイテムをドラッグし、装備欄へ投げ入れる。

E 桜楓のスクール水着

トシヒコの装備欄にEマークが表示された。
学生服やズボンの上からは判別できないが、どうやら成功したようだ。
仲間と騒いでいたトシヒコが一瞬固まる。
背中、胸部や腹部をピタッと急に何かが覆った為、戸惑っているようだ。
「どうした?トシヒコ?」
「あ…いや、な、なんでもない。ちょっとトイレ行ってくる」
「おう、次、男子は水泳だからなー」
「あ、ああ」

仲間からそそくさと離れるようにトイレへ向かうトシヒコ。
さて、ここからだ。
単純に装備をしただけなので、このままでは脱がれて終わりだ。
装備欄を眺めていると

夏カッターシャツ
シャツ
E 桜楓のスクール水着
E 学生ズボン
E トランクス
E 靴下
E シューズ

上半身の装備が解除されていく。
おそらくトイレの個室で脱いで、何が起きたのか確認した状態だろう。
なぜ自分が盗まれた水着を着用しているのか、理解できないだろうけども。
まあ水着を脱ぐにはさらにズボンのほうも脱がなければいけないから、まだ余裕はある。
「そうはいきませんよ…っと」
僕はスクール水着をタップし、詳細画面から☆マークをタップする。
☆マークが黄色に変化し、装備欄にも反映される。

E 桜楓のスクール水着★

お気に入り装備である。
この★マークがついている場合、着脱はもちろん、装備の破壊行為も不可能となるのだ。


夏カッターシャツ
シャツ
E 桜楓のスクール水着★
学生ズボン
トランクス
E 靴下
E シューズ

お、どうやら下も脱いだようだ。
その状況を見ることができないのは大変残念ではあるが、想像するだけで愉快である。
おそらく水着を脱ごうとしているのだろうが、設定がそれを許さない。
身体に密着した水着はまるでトシヒコの肌のように離れないはずだ。

E 夏カッターシャツ
E シャツ
E 桜楓のスクール水着★
E 学生ズボン
E トランクス
E 靴下
E シューズ

プールに遅れて現れたトシヒコは学生服のままで、顔は真っ青である。
「どうしたトシヒコ、体調悪いのか?」
体育教師が心配そうに声をかける。
「は、はい…すいません。見学させてください」
まあ脱ぐわけにはいかないよな。自分が変態で、犯人だということがバレてしまうものな。
バスケやマラソンなら体操服を着るからなんとかなったかもしれないが、水泳は回避不可能である。
「なんだよトシヒコ、ずる休みかよ(笑)」
仲間から軽いヤジが飛ぶ。
「う、うるせー、腹いたいんだよ!」」
トシヒコは人目から逃れるように隅っこに座る。

★マークを外さない限り、永遠に水着を脱ぐことはできない。
つまりトイレも、お風呂の時も脱ぐことができないのだ。
将来女性と付き合うことになって、ホテルに行くことになってももちろんそのままである。
脱がずにすることは不可能ではないだろうが、それで幻滅しない女性は皆無であろう。

「まあ、これで終わらせるわけがないんだけどね」
僕の恨みはまだまだこんなもんじゃない。どんどん追い込んでやる。



さて、トシヒコに次は何をしてやろうかと思案をしていると、僕の机の前に派手な女生徒が寄ってきた。
「あんたさー?最近盗撮?とかしてない?」
僕は操作していたスマホから目を離し
「なんで?そんなことしてないけど」
「楓をさー、なんか撮ってたように見えたからね」
ああ、思い出した。
この子はたしか楓ちゃんと幼馴染で、仲が良いんだっけ。
清楚系な楓ちゃんとは違い、典型的なギャルなこの子はの名前は何だったかな。
「無視してんじゃないよ」
胸ぐらを掴まれ、凄まれる。
「勘弁してよ、椿さん」
そうだ、橘 椿(たちばなつばき)だった。
「スマホの中なら見てもらって構わないよ」
僕はスマホを椿さんの方へ差し出す。
スマホを受け取った椿さんは掴んでいた襟を離し、僕はむせながら椅子に座り直す。
慣れた手つきで写真フォルダを漁っているようだ。
もちろんあのアプリは取り込んだ写真を残すようなことはしていないので、何も見つからない。
ある程度触って、スマホで盗撮してないと判断したのか
「お前みたいなのが楓の水着とか盗むんじゃないの?」
と捨て台詞と共にスマホを机に上に放り投げてきた。
「やだなあ、憶測で犯人扱いしないでよ」
「…ふん」
おお、怖い。クラスカースト上位の方は態度も横柄ですなあ。最近おとなしいトシヒコを見習ってほしいね。
そうだ、椿さんもおとなしくしてもらおうかな。
僕はアプリを起動し、僕から背を向けて立ち去ろうとする椿さんをスキャンする。
(スカート短いなあ、パンツが見えるギリギリだよ)

取り込んで表示された装備一覧を眺める。
さーてどうしてやろうかな。
パンツが見えちゃったら、楓さんも困るだろうし…。



くそ、あいつもハズレか。怪しいと思ったんだけどな。
幼馴染の楓の水着を盗んだやつを探して3日目。
最初はトシヒコと探していたんだが、あいつは昨日から体調を崩したのか、ノリが悪い。
それでも私は楓を悲しませたやつを許せない。
絶対犯人を見つけてやる。

授業中も私は教室後方の席という利点を活かしてクラスの奴らを見張る。
さっきのやつは授業中もスマホを弄ってたから怪しかったんだけどな…。
さて、次に怪しいのは…
私は組んでいた足を組み替える。
(ん、あ、あれ…?)
やけにスースーする…?
(え、ちょ、ちょっとうそでしょ!?)
スカートの上から触り確認する。
え、私下着履いてなかった…?
いや、それはない。今朝だってちゃんと…。
だが現に今、私のスカートの下にあるべき下着が存在していない。
たしか予備の下着がポーチにあったはず。とりあえずそれを…。
「せ、先生すいません、トイレへ…」
私はスカートを抑えながら慌てて教室を抜け出した。

ーーーーーーーーーー

やっぱり確認はトイレかな。
僕は慌てて出ていく椿さんのお尻を眺めながら考える。
もちろん椿さんのパンツを消したのは僕だ。消した、というより装備解除をして僕のアイテム欄に入れたんだけど。
さて、多分あの小さなカバンには予備の下着が入ってそうだし、また消しちゃうのもいいんだけどもー。

それじゃ面白くないよね。

ーーーーーーーーーー

私は急いで、スカートが翻らないように抑えながら駆け足でトイレの個室に入った。
スカートを捲り、実際に自分が下着をつけていないことを確認する。
(え、なんで?いったいどうして…)
履いていた下着はどこでなくしたのか、いつから履いていない状態だったのか…。
下着なら見えても構わないと思って取っていた行動が実はノーパンだったのではと考えると顔面蒼白となる。
と、とりあえず替えの下着を…。
私はポーチから予備を取り出した。
「…あれ、なに?」
取り出した下着を履こうと、足にかけた瞬間、ものすごい嫌悪感に襲われる。
「え?」
なんだろう、この下着を触っているだけで気持ちが悪くなってくる。
いったい何が起きてるの…。

ーーーーーーーーーー

ほー、これが装備制限か。
クレリックは刃物を持てなかったり、魔術師は重い防具を身に着けられないというアレだ。

E 夏セーラー服
E シャツ
ブラジャー
E スカート(カスタム)
パンツ
E 靴下
特性:下着装備不可

予備の下着をやはり持っていたようだが、Eマークがつく気配はない。そしてこの特性がある限り、僕でも下着を装備させることはできないようだ。タップをするがEマークは表示されない。
ついでにブラジャーも外れちゃってるから、貰っておくね。
椿さんは一生ノーブラノーパンで生きなければいけないわけだ。よかったね、下着のラインが出ちゃうことに悩まくても良くなったよ。胸は垂れちゃうかもだけど。

でも僕は少し考え直す。
さすがにちょっと疑われただけで、ただの痴女にしてしまうのは可哀想な気がする。
まあ疑った相手は、正解で犯人だったわけだけど。
僕は手当り次第に、集めた衣装リストから、椿さんに似合いそうなものを探す。
(お、これなんか下着嫌いの椿さんに似合うんじゃないだろうかーなんてね)
下着嫌いにしたのも、僕なんだけどせめてもの情けだよ。


E 夏セーラー服
E シャツ
E スカート(カスタム)
E 紙おむつ★
E 靴下
特性:下着装備不可

おむつを履いてたら、短いスカートを履こうなんて思わなくなるよね。
サービスで装備もさせてあげたよ。防具は装備しないと意味がないからね。
紙おむつはどうやら下着には該当しないみたい。
★マークもつけてあげたので自分では外すことはできないし、おむつは水着と違ってずらして処理する、ということもできないだろうから、絶対おむつに漏らすことになっちゃうだろうけど。
おむつ交換できないから不衛生かなと思った僕は紙おむつをタップし、詳細を呼び出す。
お、やっぱりあった。
自動交換機能を見つけた僕は早速設定をする。
おむつ使用後15分経過したら新しいものに交換されるようになった。
15分間はおむつに貯まるわけだから、その間は不快感があるだろうけど、椿ちゃんは今後トイレへ行く必要がなくなったわけだから、逆に感謝してくれてもいいかな。
彼氏とかには見せられないだろうけどねっ。


あれから1週間。
トシヒコのやつはこの暑い中で厚着をして学校に来るようになり、周辺の仲間とも積極的に絡むことはなくなった。
椿さんはしばらく長いスカートを履いて学校へ来ていたが、2-3日で不登校となった。
クラス内カースト上位が軒並みおとなしくなり、クラス内では多少の混乱は続いているが、コップの中の揺れた水はいつか収まる。そのうち新しいカーストが生まれるのだろう。
とはいえ、僕の復讐の炎はまだ消えることはない.
トシヒコへの復讐はまだ終わらないのだ。
さて、どんな復讐にするかー。僕はスマホをいじりながら考える。
そんな僕の席の近くで、女子が数名固まって喋っている。

「楓さー。やっぱり別れちゃったの?」
「そんなことはないと思ってるんだけど…。最近トシヒコ君、機嫌が悪いみたいで」
「いいカップルだったのになー。トシヒコのやつ何考えてるんだろね」
「橘さんも体調悪くて休んでるんでしょ、どうしちゃったんだろねまったく」
楓ちゃんとその取り巻きがわいわいと騒いでいる。
なんと、トシヒコと楓ちゃんは付き合っていたのか。
楓ちゃんは可愛らしいけどおとなしい性格だが、ギャルの椿さんと一緒にいたため、
イジメられることもない、カースト上位に属していると思っていたが…。
なるほど、楓さんと親友で、女子に人気のあるトシヒコと付き合っていたとなれば女子もそうそうハブれないだろう。
影で僕を極限まで苦しめていたあんな野郎と付き合うとか…。
僕の心のなかで楓ちゃんに対してふつふつと怒りが湧いてくる。
あんなに可愛いのに、男を見る目がないんだな。
僕が君ならもっと、まともな男を探すと思うよ。

僕はその日の放課後、復讐に必要となるアイテムを集めまわった。
今回の復讐相手と、その方法が決まったからね。

その翌日。
「トシヒコと椿の秘密を教えてやる。放課後 校舎裏まで」
そう書いたメモを楓ちゃんのアイテム欄に入れておいた。
いつの間にかスカートに入っていたメモに怪しんだはずだが、
内容は楓ちゃんにとってやはり捨て置けないものだったのだろう。
しばらくすると校舎裏に一人で、あたりをうかがうように現れた。

「やあ、楓さん」
「…あなたは…同じクラスの」
「どうも」
「なぜ体操服を着てるの…?」
「…いろいろありまして」
そうこれは、後々必要な服装なのだ。
楓ちゃんはスカートからメモを取り出すと、メモを僕に見せつける。
「これは、本当なの」
「本当とは?」
「最近二人の様子がおかしい理由を知ってるの?」
楓ちゃんは不安そうな顔で僕を見つめる。
「はい、知ってますよ」
「それは、なに―」
「その前に」
僕は楓ちゃんの問いかけを制する。
「1つ聞いておきたいんです。トシヒコ君のことで」
「トシヒコ君の…?」
「トシヒコ君と付き合ってますよね?」
「……」
「答えないと教えませんよ」
「…はい、お付き合いしています」
彼女は一瞬ビクッと震えたが、顔を赤くしながら俯く。
「聞きたいのは…それだけ?」
「いいえ、付き合っているのは知っていますからね。僕が聞きたいのは、そのトシヒコ君が影でやってたことです」
楓ちゃんはハッとして顔をそのまま伏せる。
「知ってたんですね、イジメをしていたことを」
「…」
「知っていたなら止めてくれればよかったのに」
僕は残念そうな顔の演技をする。
「ごめん、なさい」
まあ、いいけどね。僕はトシヒコに復讐すると決めているのだ。
せいぜい役に立ってもらおう。

僕はスマホを取り出し、楓ちゃんの装備を確認する。

E 夏セーラー服
E 夏スカート
E スリップ
E ブラジャー
E パンツ
E ローファー

「…?なにしてるの…?」
「なに、トシヒコや椿さんの秘密を教えてあげようと思ってね」
土曜日に手に入れたアイテムを呼び出し、楓ちゃんに装着させてみた。
彼女は一瞬ビクンっとしたかと思うとグラグラと揺れ、そのまま床に倒れこむ。
「い、痛っ…、なに急にバランスが取れなく…」
どうやら僕の目論見は上手くいったようだ。
「!? あなた、いったい私何をしたの…?」
彼女は自身に何が起きたか、まだわかっていないようだ。
僕はゆっくりと彼女に歩みを進める。
「こ、こないで…なに、なんで足が動かない…えっ」
彼女は自身の脚の様子がおかしいことに気が付いたようだ。
「え、ほ、骨…!?」
「偽物の骨ですよ、もちろん」
彼女の健康的なふとももからから肉がすべて削げ落ちてしまったような、白い骨が彼女のスカートから伸びている。

E 夏セーラー服
E 夏スカート
E スリップ
E ブラジャー
E パンツ
E 骨格模型の脚
ローファー

彼女から伸びている「骨の脚」は当たり前だが筋肉や神経などは通っておらず、自身の意志で動かすことはみじんもできない。
装備が外れた状態のローファーは回収しておこう。

「これが、秘密ですよ」
「…え…」
「トシヒコも椿さんも、こういう目にあったんですよ、僕にね」
「あっ…あっ…」
「さて、次はどこがいいですか?手?体?頭は最後のほうがいいですよね」
「ひ…ごめんなさい、ごめんなさい!やめてください…!」
動く両手で這いつくばるようにこちらへ向き直り、頭を下げる彼女。
「トシヒコも楓さんもここまでひどいことはされてないんですけどね。トシヒコにはもっとひどい目にあってもらいたいなあって思ってるんですよ」
僕は次のアイテムを彼女の装備欄に移す。
「そのためにはちょっと、楓さんの持ち物が必要なんです」
「やめてください…謝ります!謝りますから…!」
人差し指でEマークを付けてやる。
ついでに見やすいように衣服もはがしておこうか。

夏セーラー服
夏スカート
E スリップ
E ブラジャー
E パンツ
E 骨格模型の手
E 骨格模型の脚

彼女の衣服は消え去り、身体を支えていた手は一瞬にして模型にかわり、
彼女の身体は羽根をもがれた鳥のように床に打ち付けられる。
「うっ…うっ…ごめんなさい…ごめんなさい…」
泣きじゃくり、謝罪を繰り返す彼女。
僕はそれを無視して、スマホのアイテム欄であるモノを探す。
お、あったあった。

「楓さん」
「な、なに…?」
「これ、見てみてくださいよ」
僕は自分をターゲットにし、見つけたものを1つ、装備する。
その瞬間、自分の脚から力が少し抜けた感じがした。
「な、なに…なんなの?」
「ほら、よく見てくださいよ、これ」
僕は右手で体操服の下から伸びる、脚を指さす。
「ふっくらしてると思いません?まるで、女の子みたいに」
そう僕の体操パンツから、決して男には出せない、すらりとした脚が2本、覗かせている。
「なかなかの形のをした脚だと思わない?」
僕はそのきれいな脚を彼女に見せつけるように近づける。
まだ少女のようなしなやかさを残しつつも、大人のふくらみを持ったその脚はもちろん―

E 体操服
E 体操パンツ
E 桜楓の脚

「見たことあるでしょ?これ、楓ちゃんの脚だよ」
ウソ…と小さな声。
「そしてー」
手も同じように装備をしてみる。

E 体操服
E 体操パンツ
E 桜楓の手
E 桜楓の脚

スマホを持った手が一回り小さくなる。
うっすら毛の生えていた腕は白く、細く、そして柔らかな肌に変わる。

「あは、すごい。こんなきれいな手が、僕の身体についているなんて」
「……やめて」
「代わりといってはなんだけど、その手足は自由につかっていいから、動けばだけど」
四肢が動かない骨と化した彼女は、芋虫のようにはいつくばっている。
下着だけを身に着けた身体に僕は次のターゲットを移す。
「まあ、手足だけじゃ終わらないよね」
「…おねがい、本当に…」
「わかったよ」
僕は両手を上にあげて降参のポーズをとる。
ホッと息を吐いた楓ちゃんを見て
「なーんてね」
僕は彼女からあっさりと首から下を奪う。
身体に密着していた下着は、骨になってしまった身体からするりと滑るように脱げる。
さっとそのアイテムを回収をしてしまう。

E 骨格模型の身体
E 骨格模型の手
E 骨格模型の脚

「そんな…ひどい」
動かせる部位が首しかなくなった彼女は、視線だけを、涙目でこちらへ向けてくる。
「さーて、じゃあ身体も装備しますかねー」

E 体操服
E 体操パンツ
E 桜楓の身体
E 桜楓の手
E 桜楓の脚

シュっという音とともに体操服が大きくなったような気がした。
実際は自身の身体がひと回り小さくなったのだが。
逆に体操パンツのほうは大きなお尻で逆にすこしきつくなったような気がする。
「ふう、なるほどこれが楓ちゃんの身体か」
下を見下ろすと体操服が柔らかい、大きな山を2つ作り上げている。
そしてその下でキュッと引き締められるウェスト、そしてそこからヒップへの美しいライン。
もちろん男の僕では決して出せない体型だ。
「どうかな、この身体」
僕はしなを作ってポーズをとり、彼女に見せつける。
「私の…身体」
「そうだね、君の身体だったものだね。でもいまは僕が使ってるからね」

さて、トシヒコの仲間の復讐はそろそろ終わりだ。
このままだと校舎裏ではすぐに見つかって大事になってしまうだろう。
「もう1つ試したいことがあるから、協力してね」
僕はスマホから最後のアイテムを取り出す。それはもちろん

骨格模型の頭

「頭を取り換えられちゃったら死ぬのかな?それとも意識は残るのかな?」
彼女の顔がより一層ひきつる。
「じゃあね、これが終わったら助けを呼ぶといいよ」
スマホをタップする。
「呼べたらね」
「やめ―」
彼女の声はかき消され、ひきつった顔は一瞬で骨…つまり頭蓋骨に置き換わり、そのままコテンと床に転がる。
そのはずみで身体から外れてしまったようで、コロコロと頭蓋骨だけが少し転がっていった。
「あ、しまった、意識が残ったかどうかこれじゃわからないな」
僕は楓ちゃんの脚で頭蓋骨をつんつんと蹴りながらつぶやく。
なーんてね。大声で叫ばれたら面倒だから戻さないけど。
僕はゲームでレアガチャを引き当てたときのように、わくわくした手つきで
手に入ったアイテムを探して、装備する。

E 桜楓の頭

短髪だった僕の髪の毛が一瞬にして肩まで伸びる。
細くてつややかな髪の束が視界に入る。
「あー。あー」
高くて澄んだ声が僕の耳に入ってくる。
スマホをさらに操作、装備を変更する。
彼女が着ていたものを、彼女になった僕が引き継ぐのは当然のことである。

E 夏セーラー服
E 夏スカート
E スリップ
E ブラジャー
E パンツ
E ローファー

装備欄からは身体の部位は消え去り、他人の衣服を装着した際にでる持ち主名前も表示されていない。
つまり僕は手に入れたのだ。彼女の服、顔、声、脚、手、身体、そしてその立場をすべて。
僕のときより少し低い視界、そして全身が若干不安になるような力細さ。
セーラー服越しでもわかる大きな胸とそしてスカートからわかるウェストの細さ、そして足の長さ。
僕は自身を抱きしめ、身体の感覚を堪能する。
「うふふ…さーて、トシヒコ君に会いに行かなくちゃ」
一通り楽しんだ僕…いや私はスマホをスカートのポケットに入れて、校舎へ向かう。

後日、校舎裏に白骨死体が転がっている!と大騒ぎになったが、学校の人体模型だと判明すると、質の悪いいたずらとして対処され、模型はいたずら防止のために鍵付きロッカーへ片づけられることになったのだった。



 楓ちゃんの身体を奪った僕はその姿のまま下校する。
トシヒコに会おうと思ったら既に帰ったよ、とクラスの女子から教えてもらった。
楓ちゃんの姿だとみんなが笑顔で話しかけてくれるのは気のせいではないようだ。僕も可愛い子と話すだけで幸せを感じるのは理解ができるので仕方ない。

さてこのまま楓ちゃんのお家に帰ってもいいんだけどその前にギャル女子高生の椿ちゃんの様子を見ることにしよう。
楓ちゃんと幼馴染って事は家が近いはず。
僕はスカートから楓ちゃんのピンク色のカバーがついたスマホを取り出す。
パスコードが分からなくても、問題ない。自身の指紋でロックを解除してトークの履歴やGPSのログから家を割り出す。ナビの案内を頼りに歩いていくと、橘と書かれた表札がかかった家が見つかった。

「休んじゃって、心配してたんだよ」
玄関先で椿ちゃんの母親に通された僕は、彼女の部屋の前で声をかける。
会いたくない、とか細い声が返ってきたが、一目見たら帰るから、という約束で部屋に入れてもらう事ができた。
「心配かけてごめん、でも…」
椿ちゃんはだぼっとしたパジャマを着ている。
もちろんそれはオムツを隠すためだと僕は分かっている。
彼女の特徴である明るい茶色の長い髪はぼさぼさのまま手入れがしばらくされていないようだ。
僕は彼女を観察し、あたりさわりのない会話を続けながらスマホを取り出し、彼女にあるものを装備させた。
「あっ……」
小さな声を出す椿ちゃん。
僕が転送したのは僕-つまり楓ちゃんの体内に溜まっていた排出予定の水分だ。それを僕の膀胱から彼女の膀胱へ。
(おや)
装備させた瞬間に装備欄から水分が消え失せオムツが使用済みオムツと名称を変えた。
椿ちゃんは顔を赤くして俯いている。
(ははあ…どうやらトイレ不要の生活をしているうちに、溜まったらすぐに出ちゃうような体質になったのかな)
「あれ、なんかアンモニア臭いような…」
トボケたふりをして匂いを嗅ぐふりをする。
楓ちゃんはビクッとして顔を伏せる。
「………」
「もしかして…」
僕は押し黙ってしまった彼女のパジャマをめくる。
必死に抵抗した椿ちゃんだが、おむつがちらりと見えてしまい、泣きじゃくりながら弁解を始めた。
「ち、ちがう…これには…わけがあって、おむつが取れなくて…」
「取れなくて…?椿ちゃん、赤ちゃんになったの?」
「ち、ちがうの楓。そういう意味で取れないんじゃなくて物理的に…」
「もう、身体の調子が悪いなら、言ってくれればいいのに。お漏らししちゃうのは恥ずかしいことじゃないからね、大丈夫だよ」
「ち、ちがうの…、違う…」
僕はスマホから椿ちゃんの装備欄を呼び出す。
「…楓……?」
「うん、分かってるよ。椿ちゃんは赤ちゃんになりたいんだよね?」
僕はとびきりの笑顔を作る。
違和感のある返答だったのか彼女は怪訝な目をする。
「……楓、スマホ、そんな機種だっけ…?っていうかそのスマホ、どこかで…見たような」
「今日からね、変えたんだ」
「え、だってそれ、あいつと色違いでお揃いにして…」
あいつ…ああ、嫌な奴の顔を思い出してしまった。
楓ちゃんの天使のような笑顔が崩れてしまう。
「やだなあ、トシヒコ君にも伝えたよ、こわれちゃったからって」
「……あなた、誰?」
椿ちゃんが険しい顔をしながら部屋の隅へ後ずさりをする。
あれ、もうバレたかな。もしかしてこの3人の間ではトシヒコの呼び方が違ったかな。ま、いいか。
「やだなあ、楓だよ。あなたの幼馴染の」
「…嘘だ」
「ま、嘘だけどね」
僕はスッと立ち上がると部屋の扉の前に立つ。
「でも、この身体は正真正銘、楓ちゃんのものだよ」
僕は彼女に見せつけるようにポーズを作る。
「君も幼馴染なんだからわかるでしょ」
「…一体何が起きて…」
「まあ、君のその外せないオムツもその一環、といえばいいかな」
僕は彼女に、僕が犯人だと告げる。
「…何が目的なの、楓の身体を奪って、私にこんなモノを着けさせて…」
「復讐かな。イジメられたり、盗撮犯扱いされた…ね」
「…盗撮…?……そのスマホ!もしかしてクラスの…」
どうやら僕に思い至ったようだ。
「そう、その男だよ。いまこの身体を動かしているのは」
「…一体どうやって…。楓はどこにいるの」
「ちょっとね、動けなくなってもらってるよ」
「…そのスマホね」
よこしなさい…!と叫び声とともに飛びかかってきた。
僕は慌てずに、彼女からいくつか装備を奪う。
先程楓ちゃんがガクッと倒れた時と同じように、椿ちゃんも床に倒れ込む。
(なるほどね、こう操作すれば交換せずとも奪えるのか)
今、彼女から奪ったのは腕、脚の付け根から15cmぐらいから先をすべて。倒れ込んだ彼女はまるで赤ん坊のような手足の長さに見える。
「わ、私の指…手が…!あ、脚も…消えて……」
彼女は短くなった棒のような腕を使い身体を起こし、同じく棒のような脚の付け根でうまくバランスを取るように立ち上がるが…。
「えいっ」
軽く押すだけで成すすべもなく仰向けに倒れる。
仰向けになってしまうと自力では起きられないようだ。
「…だ、だれかー」
おっと、階下にいる母親に来られると面倒だ。
僕はさっと、彼女に、おしゃぶりを装備させてやる。
あわせてベビー服もプレゼントしてやろう。

E おしゃぶり★
E ベビー服★
E おむつ★

「……むぅ!……んーっ!?」
おしゃぶりを完全に咥えこんで開けなくなった口からはくぐもった声しか出てこない。
おしゃぶりを外そうとするが、短くなった、腕ではそもそも口に手が届かない。まあ、届いても外せないんだけど。
「ベビー服もかわいいね。全身覆うタイプにしてあげたよ」
短い手足もすっぽり覆う、いわゆるロンパースと言うやつだ。
あ、そうか。
「オムツは外れるようにしてあげるね」

E おしゃぶり★
E ベビー服★
E おむつ

これでよし、っと。
「外せるようになったよ。これからは自分でトイレいくか、オムツ替えてもらってね」
「………!?!?」
僕は混乱している彼女にまたがるように座る。ベビー服から下半身を止めているボタンを外し、ぺろりとめくると、彼女のおむつがあらわとなる。
「こうやって、取り替えられるからね」
僕はスカートの裾を抑えながら立ち上がる。
「あ、そうだ。そのおしゃぶり、表側がアタッチメントになっててね、この哺乳瓶を接続可能だから」
スマホからとりだした哺乳瓶を彼女の顔の横に置く。
もう二度とおしゃぶりが外せない彼女はこれで食事を取るしかなくなるが、しょうがない。喋られたら僕の秘密がバレてしまうから。
涙で顔がくしゃくしゃになった椿ちゃん。ああ、もしかして親とかにその格好を見られたら…とか考えているのか。
その不安は解消してあげないといけない。僕もそこまでおに鬼じゃない。スマホを取り出して、ある設定をする。

橘 椿♡
E おしゃぶり★
E ベビー服★
E おむつ

名前にマークをつけてやった。
これで彼女の姿、格好に違和感を持つものはいなくなる。
両親も、そして世間も彼女を女子高生ではなく、特殊な扱いが必要な大きな赤ん坊として扱うことになるだろう。もちろん本人ー彼女自身の意識はそのままではあるが。
「じゃあね、椿ちゃん。その新しい身体を大事にしてね」
橘家を出るときに、椿ちゃんの母親に「楓ちゃん、椿の子守をありがとう」と笑顔で送り出される。


さーて、最後はトシヒコ。君の番だよ。



翌日。
僕は楓ちゃんが普段使っているベッドで目を覚ます。
あの後、楓ちゃんとして、桜家に帰り、楓ちゃんの部屋を使い、ベッドで寝た。

楓ちゃんのお母さんも、お父さんも、そして可愛い妹さんも、本物の楓ちゃんが行方不明になっていることはもちろん、目の前の楓ちゃんを男が動かしていることにも気が付かなかった。
もちろん、これは僕が楓ちゃんの頭…脳も装備している状態だからだ。
彼女が考えていたり、思っていたりしたことを僕は読み取ることができる。
トシヒコのいいところまで溢れ出てくるのが厄介ではある。
寝転がったままスマホを取り出し、アイテム欄を眺める。
中には楓ちゃんのものと交換した時にアイテム化した、僕の身体も表示されている。
(今頃僕の家では僕が帰ってこないことで大騒ぎになっているのだろうか)
正直なところ、今までの自分に未練があるわけでもないし、可愛らしい楓ちゃんとして生きていくほうが僕には魅力的に見える。
(こんなに胸も大きいしね…どうしようかな)
左手で自身の胸の形を把握するかのように撫で回し、堪能する。
さて、そろそろゆっくりもしていられない時間になりそうだ。
僕は起き上がり、楓ちゃんの記憶を読みながら、いつもどおり学校へ行く支度を始める。
(セーラーにスカートに…おっとニーソックスがあるぞ、どれどれ)
過度に長い靴下は禁止…だけど検査のときでもなければ、めったに怒られることはない…か。じゃあ問題ないかな。
スルスルと長い布地を太腿あたりまでたくし上げる。
黒い布地と、適度なふくらはぎや太腿への圧着で、脚が細長く見えるようだ。
「むふふ…これが絶対領域…」
すこしだけ露出している肌は普段よりスースーしている感じが強まる。
慣れない衣服ではあるけど、楓ちゃんの記憶や身体が覚えているのか少しも違和感はない。
さて、学校へ行きますか。

記憶を深くたどれば、トシヒコの呼び名など簡単に読み出せる。
人前ではトシヒコ君、3人だけのときはトシ君、とよんでいたようだ。
「おはよう、トシ君」
トシヒコの家の前で待っていた俺は、玄関からでてきたトシヒコに声をかける。
普段はトシヒコの朝練で時間が合わず一緒に通学することはなかったようだ。
今のトシヒコは部活に参加はできないからな…。
「お、おう…おはよう」
一瞬だけこっちを見て、バツが悪いように顔を伏せてしまう。
今日も厚着をしているトシヒコはとても暑そうだ。
「最近どうしたの、元気がないみたいで…心配」
「…いや、なんでもないんだ。大丈夫…」
「朝練も行ってないみたいだし」
「大丈夫…。ちょっと体調を崩してるだけなんだ」
「…ふーん…」
僕はサッとトシヒコの背後に回ると、トシヒコが反応するよりも早く、ズボンに入ったシャツの裾を全てめくり上げる。そこから、紺色の水着が露出する。
「や…!」
やめろ、と叫ぼうとしたのだろうか。
すごい勢いで身体を翻し、裾をもった僕の手を外し、焦った様子で裾を押さえる。
その様子はまるで下着を見られた女の子みたいだ。

「ど、どうしたの、トシ君…その水着ってまさか…」
「い、いやコレは…」
僕は信じられないものを見たという演技をする。
「コレは…?」
「し、信じられないかもしれないが、僕が盗んだんじゃない…!いつのまにか着せられて、そのまま脱げなくなって…」
「わかったよ。とりあえず慌てないで、部屋に戻ろう?話は聞くから」
落ち着いた雰囲気を感じ取ったのか、トシヒコの焦りも収まる。そしてやっと人に相談できることに安堵したのか、涙を流す。

トシヒコの部屋に入る。
裕福な生活をしているのか、僕の部屋の2倍はあるような広い部屋だった。
「脱げないの、確認したいから服を脱いで?」
「い…いやそれは…でも…」
「いいから、そんなことでトシ君のこと、軽蔑したりしないから…」
「う…うん」
ゆっくりと学生服を脱いでいくトシヒコ。
そこから徐々に露となるピッチリと張り付いた楓ちゃんのスクール水着。
僕は脱がしてみようと試みるが、接着剤でくっついたかのようにビクともしなかった。
それでも身体の動きの邪魔になることはなく、動きに合わせて伸縮はする様子。
「トイレは…?」
「そ、その…股間部分をずらすことはできるから…」
「へえ…」
ズボンも脱ぎ終わったトシヒコはスクール水着のみを着た状態で立っている。
トシヒコはやや細身とは言え、男の身体のシルエットにスクール水着と言うのはやはりゴツさというかむさ苦しさを感じてしまうね。

「トシ君、その格好似合ってないね」
「…似合ってたまるか。なあ、楓、どうしたら良いと思う…?やっぱり親に…」
「そうだね…。似合う体型になればいいんじゃないかな?」
「は?楓、何を言って…」

(やっぱこのままだと違和感があるな。よーし)
僕はスマホを取り出すと、
椿ちゃんの装備欄を表示し、トシヒコと「身体」を交換するように操作する。
トシヒコの適度に筋肉の付いたたくましい身体は一瞬にして細く、弱々しい身体に変化する。
椿ちゃんの身体となったトシヒコが着ている水着は、女性らしいシルエットになって、そそるものとなった…が手足はトシヒコのままなのでどうにもチグハグ感は否めない。
一方、椿ちゃんは恐らくトシヒコの、男の子に身体になっていることだろう。
手足が動かせなくて困ってただろうから、動かせるものが1本増えてよかったね。

さて、身体だけみれば女子高生が部屋でスク水を着ている…という状態だ。
「な、なにが起きたんだ…?この身体はいったい…」
「その水着にあう体型にしてあげたんだよ?」
唖然とした表情で自身の身体を確認するトシヒコ。
僕ほどではないけど、胸が膨らみ腰がくびれ、そしてお尻が大きくなっている。
「楓…、お前一体俺に何を…!」
「落ち着いて、トシ君」
僕はこらえきれない笑いを漏らしつつ、説明をしてやる。
水着を脱げないようにしたのも、その身体に変えたのも自分であること、その身体が椿ちゃんのものであることを。
「椿…?って近所の…」
あ、そうか。情報を書き換えているから幼馴染3人組じゃなくなってるのかな。
ついでに僕が楓ちゃんじゃないことも暴露してやろう。
「てめえ…!」
今にも殴りかかってきそうなトシヒコに釘を差す。
「おっと、君をもとに戻せるのは僕だけだよ。それに確かに僕は楓ちゃんじゃないけども…身体は正真正銘の本物。昨日まで本人が使っていたものだ、殴れるのかい?」
ニヤリと笑ってやる。
「ぐっ……僕…?お前、男なのか。楓はどこだ」
「おっと…ボロがでちゃったかな。楓ちゃんの場所は…さあね?それも含めて、僕に逆らわないほうがいいと思うよ」
白骨人形で理科室に安置されてる、といっても信じてもらえないとは思うけど。
「じゃあトシ君。いままでと変わらず、学校に通ってね、休んだりしたら…どうなるかな」


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後日談

トシヒコはより一層クラスメイトから離れて過ごすようになった。
ひと回り小さくなった体型を更に隠すように過ごしている。
もしかしたら身体が女性になったことで、好戦的な性格も変わってしまったのかもしれないね。
本人は隠しながら生活しているつもりではいるけど、もし発覚しても♥マークを付けてあるから世間には騒がれないようにしている。
今の彼は社会的には「女性ということを隠して男性として高校に通っている」という状態だ。
必死にスクール水着を常時着用を隠しているけどね。

椿ちゃんもしっかり赤ちゃんとして生活してくれている。
今朝も登校中にベビーカーに載せられた彼女を見たけれど、僕を見て興奮したのか涙目で短い腕をジタバタさせてくれたので、僕は笑顔で手を振っておいたよ。
おむつとベビー服の上からでもはっきり見える大きさの股間のモノが多少滑稽だったけどね。
男子高校生のソレは彼女にはコントロールするのは難しいから大変だろうなあ。

楓ちゃんはトシヒコとは別れたよ。
そしておとなしめの性格から一転、多少性格もラフになって、スカート短くしたり、茶髪にしたりしているんだよ。夜に繁華街で見かけた、なんて言われるぐらいには、垢抜けたかな。

「-っていう感じなんだ」
僕は理科準備室のロッカーの前にある机に直接腰掛けている。
ロッカーの扉は開いており、中には身体が骸骨、頭にはどこかよわよわしい男子高校生の顔がついてる。
僕は短いスカートから伸びる脚を、見せつけるように組み換えてやる。
「そして、クラスでいじめられていた男子生徒は1名、行方不明。あ、これは前も説明したっけ」
「………!」
なにやら口をパクパクさせているが、残念ながら声は聴こえない。
何故って、顔から下は存在しないからね、声帯がなければ声はでない。
聞こえないといけないから、報告に昔の僕の顔をつけてあげているだけ。
「そして、今日が卒業式。つまり僕がここにくるのも最後ってわけさ」
「!?」
「ごめんね、楓ちゃん、直接僕をイジメたわけではないのに。でもこの身体は居心地が良くてね、返したくなくなっちゃったんだ。でも、トシヒコも、椿ちゃんも僕をイジメた苦しみを一生背負っていくわけだから、幼馴染の連帯責任ってことで、ね?」

じゃあね、楓ちゃん。
僕は彼女の頭を骸骨にもどし、ロッカーの扉を締めた。





あとがき

普段はこんな本文には書かないのですが、今回は追記方式で書いていったので特別に。

いじめた張本人のトシヒコへの仕返しがいちばん軽いですね。
これはひとえに男をイジメても面白くない、というのがあるかもしれません。
苦肉の策で女性化してみたのですが、この界隈ではご褒美にしかならない…。
反撃が可能な立ち位置でもあるので将来、またひと波乱があるのかもしれません。(書きませんけど)

面白かったら恐縮ですが評価のほどよろしくお願いいたします。